世界的にインフレが進み、日本でもようやく物価が上昇し始めました。これまでは金融資産をタンス預金にしていても困ることはありませんでしたが、今後は注意が必要です。
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目次
現金資産があれば安泰なのか?
いきなり問題です。
正解は3のおよそ240円です。
世界的には3%程度のインフレ率は珍しくありません。マイナスになったり、プラスでも1%未満だったりの状態が続いている日本は世界の異端児です。
物価が上がらないので、これまでは現金資産をタンス預金にしても困ることはありませんでした。金利はつきませんが、物価もほとんど上がらないので資産の価値が目減りしなかったからです。預貯金として預けても利子は雀の涙ほとで、タンス預金とさして変わりませんでした。
国際通貨基金(IMF)の統計で、1980年以降の日米のインフレ率の推移を比べてみます。下のグラフを見ていただくと、日本がいかに低インフレでものの値段が上昇しない国だったかがよく分かります。
失われた10年と言われたのが20年になり、30年になり、いまや30代でさえ、生まれたときから物価の大幅な上昇を経験したことがないのが日本という国なのです。
当たり前が崩れた!
ところが2022年になり、長年の当たり前が崩れました。資源や穀物などの価格が大幅に上昇し、電気代やパンなど食料品の値段に転嫁され始めたのです。年配世代はものの値段が上がるという感覚を数十年ぶりに思い出し、若い世代は初めて味わうことになりました。
ものの値段が上がっても、賃金も同じように上がっていれば心配する必要はありません。値札の金額が変わるだけで、給料で買える総量は変わらないからです。
けれど日本は物価だけでなく賃金も上がらない状態が長く続いています。賃金が上がらないまま、ものの値段だけが上がれば、多くの人はこれまでと同じだけのものが買えず貧しくなってしまいます。
給料10万円で1個1万円のものを買うなら……10個買える
【ケース1】給料が5割増、物価も5割増
→給料15万円 1個1万5000円になるので、やはり10個買える
【ケース2】給料増えず 物価は5割増
→給料10万円 1個1万5000円になるので、6個しか買えなくなる
2022年は円安も進み、海外の物価高が大きな話題になりました。テレビのワイドショーやSNSなどで、ハワイでは家族4人で昼食にラーメンを食べると1万円かかるといった話題を見聞きして驚いた人も多いでしょう。
海外の物価高は円安だけのせいではなく、日本の物価が上がらない=経済成長しない間に米国や世界の国々は成長を続けてきたため、円の価値そのものが下がってしまったことが大きな要因です。
このまま円安と低成長が続けば、海外旅行が憧れで高嶺の花だった1960年代、70年代に逆戻りです。
インフレ下で資産を守るには
2022年のような物価の上昇がこの先も続くのであれば、私たちは自分たちの資産を守るという意識を強く持つ必要があります。少なくとも目減りさせないようにしないと、老後の計画が狂って資金が枯渇しかねません。
といっても、積極的に高リスクの金融商品を購入しましょうという話ではありません。この記事でお伝えしたいのは、あくまで「守り」の運用です。
ここで再び問題です。
インフレ経済のもとで資産を守る方法として、以下の1~6はふさわしい方法でしょうか。それぞれについて〇△×のいずれかで評価して理由を考えてみてください。
タンス預金
答えは×です。
金利がつかず増えないので、物価が上がると資産価値は目減りしてしまいます。何より、オレオレ詐欺や窃盗、火災などの被害に遭う可能性があり不用心です。必要以上の現金を自宅に置くのはやめましょう。
金などの貴金属に変えても、利子がつかないという点では変わりません。資産分散の観点から一部を充てるのにとどめるのが無難です。世界有数の投資家であるウォーレン・バフェットは金など金利を生まない資産には関心を示さないそうです。
普通預金
答えは△です。
いまの日本のように日銀が無理やり金利を抑え込むいびつな政策を取るのでなければ、インフレが進めば通常は預金の金利も上昇します。このため、普通預金がまったくインフレに対応できない運用方法というわけではありません。
ただし、そもそも高い利率を期待できるわけではないので目減りを完全に抑えることはできず、緩和するにとどまります。
普通預金にする場合は、ネット銀行などの金利を比較して、少しでも金利が高い金融機関に移しましょう。この手間は惜しむべきではありません。
資産の運用先が普通預金だけという場合は、経済の推移を見ながら、徐々にほかの資産への分散も検討しましょう。
定期預金(5年固定)
答えは×です。
定期預金の金利は固定で預入時の利率が満期まで続きます。これからインフレになるかもしれないというときに長期で固定金利の商品に資金を振り向けると、物価の上昇に負けてしまう恐れがあります。
定期預金を選ぶなら1年など短期の商品にして更新していくか、適用金利が6カ月ごとなど一定の間隔で見直される変動金利の商品を選びましょう。
国債
答えは△です。商品によって×と〇があります。
個人向けの国債には以下の商品があります。
このうち、「固定3年」と「固定5年」は預入時の金利が変わりません。長期の定期預金と同じく、インフレ時には不利になるので×です。
一方、「変動10年」は実勢金利をもとに半年ごとに金利が見直されます。ノーリスクで金利の上昇に追随できるので、過度なリスクを取りたくない場合にはぴったりの運用先です。
変動10年についてより詳しく知りたいかたは、財務省の「変動10年」商品概要をのぞいてみてください。
証券会社によっては、一定額を買えば現金が戻るキャンペーンをしていることがあります。
たとえば、大手證券会社で「変動10年」を100万円以上200万円未満買うと1000円、200万円以上300万円未満なら2000円がキャッシュバックされる、という具合です。証券会社や時期によって金額が違うので、購入前にいくつかの証券会社を見比べて有利な購入先を見つけましょう。
投資信託(オールカントリー)
答えは〇です。
オールカントリーというのは、全世界の株式に投資するタイプの商品です。「オルカン」と略して呼ばれ、投資を始めたばかりの若い人にも人気があります。
株式投資なので、預金や国債のようにノーリスクというわけにはいきません。2008年のリーマン・ショックや2020年のコロナ・ショックなど世界的な危機では大きく下落します。それでも、特定の国だけに投資するよりリスクが分散されますし、世界経済の長期的な成長を信じられるのであればおすすめです。
投資信託であれば100円から買うことができます。ETF(上場投資信託)で1株単位での購入も可能です。
高配当株
答えは△です。それまでの投資経験によって×にも〇にもなります。
個別株は投資信託などに比べて値動きが大きくなるので、投資の経験がほとんどなく不慣れなうちは少額の投資にとどめたほうが無難です。
余裕資金で100株や200株など少しだけ買ってみて、自分がどれぐらいのマイナスになると動揺するのか、それとも気にせずいられるのかを見極めることが第一歩です。個別株はこれぐらい変動することがあるという感覚をつかんだうえで、少しずつ投資額を増やしていきましょう。
インフレが進んで金利が上昇すれば、株式の配当への魅力は相対的に下がるので、配当狙いの長期保有なら魅力的な企業の株を安く買える可能性があります。投資に慣れている人は経済や企業の状況を見極めて、自身の判断で購入すればいいと思います。
投資の目的を忘れない
ほかにも、不動産やリート、社債、金以外のコモディティ、暗号資産など投資先はまだまだあります。投資をしているうちに目移りしてあちこち手を出したくなったり、損を取り戻そうと熱くなってしまったりということはしばしば起こります。
そこで忘れてはいけないのは、投資の目的です。
資産を倍に増やそうと勝負しているのではなく、インフレに負けないように資産を守ることが目的ならば、過大なリスクを取る必要はないはずです。インフレ率2%が長く続き、定期預金の金利がインフレ率に追いつき、上回るようになってくれば、投資信託や個別株ではなく定期預金で運用してもいいのです。
大切なのは、これまであまり気にすることがなかったインフレ率と金利という存在を意識することです。
リスクを取りすぎることなく、
インフレ率を上回る運用を
目指しましょう!
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