確定拠出年金(企業型DC)がある企業を早期退職してFIREを目指す場合、多くは個人型確定拠出年金(iDeCo)に資産を移すことになります。いったん現金化された資産は、どのように再投資していくのがいいのでしょうか。
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目次
一括投資か分散投資か
いきなり結論を言ってしまうと、教科書的な正解は一括投資です。投資できる余剰資金があるのに現金のままで持ち続けていると、リターンを得る機会を失う恐れがあるからです。
背景には、十分に分散されたインデックス型の投資信託などに投資すれば、長期のリターンは右肩上がりになるという前提があります。
米国の代表的な指数であるS&P500指数の10年チャートを見ると、途中の凸凹はありますが、2013年に投資をすれば、およそ5倍に上昇しています。
短期的な上げ下げはあっても、長い目で見れば右肩上がりを信じているから投資するのであって、そうであればグズグズと現金で持ち続けることで複利の効果を減らすべきではない、ということになります。
退職・FIREすると、企業型の確定拠出年金(企業型DC)はいったん現金化され、個人型確定拠出年金(iDeCo)に資産を移すのが一般的な流れです。
何も考えず、iDeCoに移換された現金でインデックス型投信を一括して購入すべきなのでしょうか。
どれだけのリスクに耐えられるか
企業型DCの拠出限度額は月5万5000円か2万7500円のどちらかです。上限いっぱいまでという会社は多くないようですが、仮に月2万7500円を10年間かけていたとすれば、運用益がプラスマイナスゼロだったとしても、退職時に移換される資産は330万円になっています。
丸めて300万円が移換された場合を考えてみましょう。
300万円を年3%複利で運用すれば、10年後にはおよそ403万円になります。これを1年目と2年目にそれぞれ150万円ずつ分けて投資すれば10年後は397万円、100万円ずつを3年なら391万円になります。
ただし、これは右肩上がりで増えるという前提での計算です。
一括投資直後に50%の大暴落が起きたとすると、分散して「助かった~」ということになります。
次の表は、初回の投資直後に50%暴落し、2年目以降は3%ずつ成長した場合です。
100万円ずつ3階に分けて投資していれば、50%の暴落があっても10年後には7%ほど増えています。極端な例ですが、運用の成果はそのときの環境によって変わるということが分かります。
2020年のコロナショックや2015年のチャイナショック、2008年のリーマンショックのように、株価の暴落は突然やってきます。
さらにさかのぼれば1989年12月29日、日経平均株価は3万8915円をつけ、「来年は4万円だ」「いや10万円だ」と多くの人が浮かれていました。年明けからの大暴落を予想した人はほとんどいませんでした。
ことほど左様に、先のことは分からないものなのです。
であれば、一括か分散かはどうやって判断するか。
ここはやはり、自分の感情に従うのが一番ではないでしょうか。
投資するのは自分の資産です。
我慢して一括で投資する必要はありません。
上の表を見て怖いと感じれば分散を考えましょう。
大丈夫だと感じるなら一括を検討しましょう。
ちなみに、300万円を一括投資した直後に大暴落に巻き込まれた場合であっても、その後に3%成長が続けば25年後には305万円まで戻ります。
20~30年という期間を考えられるのであれば、一括投資が有力な選択肢であることは間違いありません。
では、自分ならどうするか
先ほどの試算のように1年も2年も寝かせるのはもったいない気がしますが、一括にもためらいを感じます。
ということで、早期退職するときの環境にもよりますが、300万円を投資するなら150万円ずつ2分割、または100万円ずつ3分割し、3カ月か半年ぐらいの間隔で投資していくのがストレスを感じずにすむのではないか、と考えています。
制度的なことを補足すると、分散投資をする場合であっても、iDeCoの口座に移換された運用益は、現金のまま置いておくことはできません。
いったん定期預金など元本確保型の商品に投資し、3カ月なり半年なり経った後に定期預金を解約してインデックス型投信を購入するスイッチングという作業が必要になります。
この作業には数日かかります。思い立った日にすぐに投信を買えるわけではないので、日々の1円2円の高低にこだわってタイミングを計るのは無意味です。
とんでもない暴落などが起きているのでなければ、事前に決めたタイミングで淡々と購入するのが、手間も少なく、精神的にもいいのではないでしょうか。
タイミングは誰も読めません。
ストレスなく淡々と、です。
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