確定拠出年金(企業型DC)がある会社で働いていると、早期退職するときには多くの場合、企業型DCで運用していた商品をいったん現金化してiDeCoなどに移換する、という作業が発生します。注意しないと、このときに思わぬ損失が発生してしまうかもしれません。避ける方法を考えます。
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目次
FIREの選択肢はiDeCoか通算企業年金
勤務先には確定拠出年金(企業型DC)があります。
退職時の移換方法に悩んでいます。
企業型DCはお得なポイントが多い制度です。
マッチング拠出というのは、事業主が出した拠出金に従業員が上積みする制度です。上積みした分が控除の対象になり、税金が安くなります。
選択制DCというのは、自分の給料を減らし、減額分を企業型DCの運用に回す制度です。運用に充てた分だけ毎月の給料が減るので、給料にかかる所得税・住民税と社会保険料が安くなります。ただし、社会保険料が減った分だけ、将来受け取る年金の額も減ります。(より詳しい解説は「企業型DCは怖い? 運用商品を選んで投資の経験値をアップ」という記事にまとめました)
メリットが多い制度なので在職時には積極的に利用しない手はないのですが、早期退職するときには少し注意が必要です。
企業型DCがある会社を早期退職してFIREを目指すた場合の選択肢は主に三つあります。
このうち3の脱退できるのは、資産額が1万5000円以下しかないなど、厳しい条件を満たしたときだけです。ほとんどの人は考える必要はありません。
現実的な選択は、1のiDeCoにするか、2の通算企業年金にするかの二択になります。企業型DCから通算企業年金への移換は、2022年5月から新しく始まりました。この二つのどちらがいいかは「通算企業年金とは? iDeCoと比べたメリットを考える」で検討しましたので、こちらもご参照ください。
どちらを選ぶにせよ、移換にあたってはいくつかの注意点があります。
タイムリミットは6カ月
最も大切なことは、企業型DCの資格を喪失してから6カ月以内に手続きをすることです。正確に言えば、退職した日の翌日(資格喪失日)が属する月の翌月を起点にして6か月以内に手続きをすることです。たとえば年度末の3/31に退職するなら、資格喪失日は4/1、その翌月の5月が1カ月目となり、そこから6カ月目となる期限は10月末になります。
期限を超えると国民年金基金連合会に自動移換され、現金のままで管理されて何の運用もできないのに、毎月の管理手数料が引かれてしまいます。この間は将来、老齢給付金を受け取るために必要な10年の加入期間にもカウントされないので、それまでの加入期間や年齢によっては60歳から受け取ることができなくななります。再移換はできますが、煩雑ですし余計な手数料もかかります。そこで、
退職後は早めに移換手続きをする
ということが大切です。
とくにiDeCoを選ぶ場合は、金融機関によって口座管理料や商品のラインナップ、サポート体制が違うので、早めに大手のネット証券などを中心にいくつかの金融機関を比較しておくと安心です。
私がいま積み立てている企業型DCは、インデックス型投信なのに信託報酬が高めの商品が多くてストレスがたまります。口座管理料やサポート体制も重要ですが、商品のラインナップと信託報酬の高低は長期でみれば運用成績に大きく影響するので、iDeCoに移換するなら特にこだわりたいと思っています。
移換時にはいったん現金化される
個人的にはもう一つ重要だと感じていることがあります。
それは、移換時にはこれまで積み立てていた投信などがそのままiDeCoや通算企業年金に移管されるのではなく、いったん現金化されるという点です。
2020年春に世界的な感染症の拡大で株価が急落すると、誰が予想できたでしょうか。世界中の中央銀行による金融緩和や資産買い入れにより株価はほどなく戻ったので、そのまま寝かしておけば一時的な含み損になっただけで済みました。企業型DCの口座は頻繁にチェックするものでもないので、気にしていなければ含み損に気づくことさえなかったかもしれません。
けれど、早期退職で企業型DCの運用商品を現金化するタイミングが、運悪く株価の暴落と重なったらどうなるでしょうか?
それまでの含み益が吹っ飛び、含み損がある状態で現金化されて損失が確定してしまう、という事態になる可能性があります。社内ではそのタイミングでちょうど早期退職した同僚がいました。尋ねてはいませんが、含み損が確定してしまったのではないかと心配です。
そこで、ポイントの二つ目です。
退職を決めたら早めに利益を確定
私は退職願を出す時点で企業型DCで積み立てている商品に含み益が出ていれば、いったん売却して利益を確定させ、元本確保型の定期預金に乗り換えて退職日を待とうと考えています。売却せず退職日まで保有し続ければ評価額がさらに上がる可能性もありますが、万が一のリスクは避けたいのです。
逆に含み損が出ているようなら、少しでも値が戻ることを期待して、退職日までそのまま保有しておくかもしれません。
早期退職すれば、これまでのような毎月の安定した給料はなくなります。老後の生活を支えることになる資産は、なるべく減らさず大事にしたいものです。
早期退職が視野に入ってきたら、移換先となる金融機関や企業年金連合会にアクセスして、退職前後の戦略を練ってみてはいかがでしょうか。
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