円安が進むなか、海外への投資に関心を持つ人が増えています。外貨預金やFX(外国為替証拠金取引)、外国の債券や株への投資など様々な方法がありますが、どれがおすすめなのでしょう? リスクと合わせて考えてみます。
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目次
海外資産に投資するメリットとデメリットは
海外への投資には、日本の円を米国ドルやユーロ、ポンドなどに換金して通貨そのものを保有する外貨投資や、海外の資産に投資する海外投資・外国投資などがあります。
日本は1973年に変動相場制に移行したので、円と海外各国・地域の通貨との取引価格は日々変わります。先物取引などと組み合わせて変動リスクをヘッジ(回避)しない限り、通常の値動きリスクに加えて、為替変動のリスクも負うことになります。
海外投資のメリット
海外資産への投資としては、以下のようなメリットが考えられます。
メリットの1つ目に挙げた通貨分散の効果は、日本国内に住み、日本円を使って生活してると実感が湧きにくい部分です。
けれど、円安で日本円の価値が下がると旅行先の海外でものの値段が高くなります。国内でも、国際的に流通する自動車や携帯電話、海外ブランドの服飾品やバッグなどは、ドル建ての価値は変わらないのに高くなってしまうことがあります。
1ドル=100円なら 1万ドルの製品は100万円で買える
(円安)1ドル=120円になると 1万ドルの製品に120万円を支払わなければならない
(円高)1ドル=80円になると 1万ドルの製品は80万円で買えるようになる
日本円、日本の資産だけで運用していると、円安に加えて日本の国力が落ちることで、ものの値段が高くなって老後の暮らしが苦しくなるかもしれません。海外の通貨や資産にも投資しておくと、円安や国力低下によるマイナスを緩和することができます。
日本は長く低金利が続いていて、預貯金の利子もほぼゼロです。海外の資産に投資することで、より高い金利を得たり、成長力の高い企業に投資できたりするのも魅力です。
投資をすると、その国や地域のニュースや政策が気になり始めます。投資先の地域を旅行してみたい、関連する本を読んでみたい、などと思うようになるかもしれません。投資そのものの効果というわけではありませんが、興味や関心の幅が広がれば人生の楽しみが増えることになるので、これも意外に大きなメリットではないでしょうか。
海外投資のデメリット
では、反対に海外投資にはどんなデメリットがあるのでしょう。
米国株などは初心者向けから慣れた人向けまで様々な本が出ています。雑誌やウェブでも頻繁に取り上げられるようになりましたし、以前に比べると情報量は格段に増えました。
それでも言葉の壁がありますし、国内の投資先に比べると情報入手には高いハードルがあります。
換金手数料がかかり、換金や利益確定のタイミングによっては為替差損が発生してしまうのもネックです。外貨に換金して投資するなら、手数料がなるべく安い換金方法を選ぶ必要があります。
米国の個別株やETFは、国内で課税される20.315%に加えて、米国で10%が課税されます。確定申告で外国税額控除の手続きをすれば一定額を取り戻せますが、慣れないと手間です。現地課税の有無や税率は国や地域によっても違います。
売買と換金の時期がずれて外国通貨そのものの状態で保有していると、その間の為替の変動による差損益を雑所得として申告しなければならなくなります。この分は源泉ありの特定口座でも証券会社側で手続きをしてくれないので注意が必要です。
海外投資の種類は
ここからは海外資産への主な投資について、特徴や注意点をご紹介します。
外貨預金
入り口として手を出しやすいのは外貨預金でしょう。日本円と同じように普通預金や定期預金があり、キャンペーンで金利が引き上げられていることもあります。
預金と名がついていますが、外貨預金は1行あたり1千万円までの元本と利子が保護される預金保険制度の対象外です。万が一、預け先の金融機関が破綻すれば元本割れする可能性があります(預金保険機構「預金保険制度の概要」)。
預金をするときは利率に目を奪われがちですが、利益は換金に必要な為替手数料にも大きな影響を受けます。
米ドルで1万ドルを1年間、外貨預金したケースで考えてみます。為替レートは預入時、日本円への再換金時とも1ドル=140円とし、利率は年1%、税金は20%とします。
<ケース1>手数料は1ドル当たり片道1円
預入時) (140円+1円)×1万ドル=141万円必要
1年後は?)1万ドル+1万ドル×1%×80%=1万80ドルになる
円に換金) 1万80ドル×(140円-1円)=140万1120円
年間損益) 140万1120円ー141万円=-8800円
<ケース2>手数料は1ドル当たり片道6銭
預入時) (140円+6銭)×1万ドル=140万600円必要
1年後は?)1万ドル+1万ドル×1%×80%=1万80ドルになる
円に換金) 1万80ドル×(140円-6銭)=141万595円
年間損益) 141万595円ー140万600円=9995円
ケース1では1%の利子がついたにもかかわらず、損をする結果に終わってしまいました。外貨預金をするときは必ず、為替手数料込みで試算するようにしましょう。
キャンペーン金利の期間にも気をつける必要があります。
「いまだけ! 1カ月もの米ドル建て預金の利率が3%!!」
こんな広告を見て100万円を1年間預けて3万円なら悪くないな、と思うのは間違いです。ポイントは「1カ月もの」という部分で、広告をよく見ると、「1カ月経過後は通常の金利が適用されます」といった趣旨のことが書かれているはずです。
キャンペーン金利が適用されるのは1カ月だけなので、100万円分の米ドルに対してつくキャンペーン利子は以下のようになります(税金は20%とします)。
100万円×3%×1/12カ月×80%=2000円
実際には為替手数料が引かれるので、利益はさらに少なくなります。その後はキャンペーン金利より低い通常金利に戻るので、1年間で得られる利子は3万円よりかなり少なくなります。通常金利が1%だとすれば、為替手数料を考慮しない税引き後の利益は9333円です。大きく目立つ文字で書かれた金利だけでなく、適用期間も確認してください。
さらに注意が必要なのは、新興国通貨建ての外貨預金です。
新興国通貨建ての預金は高金利なので、国内の預金と比べると魅力的に見えますし、この点を強調した広告も見かけます。けれど、新興国の通貨は短期間で大きく変動することがあり、金利では埋められないほどの為替差損を被ることがあります。
米ドルなど主要通貨より為替手数料が高く設定されていることも多く、為替差損でマイナス、為替手数料でさらにマイナスという泣きっ面に蜂のような事態も起こります。
中期や長期のチャートを見ると一貫して右肩下がりということも多いので、短期投資だけでなく、長期投資にもリスクがあります。
たとえば、トルコリラは2014年末には1リラが50円を超えていましたが、その後はほぼ一貫して右肩下がりで、2022年に入ってからは10円を割り込んでいます。新興国の通貨に投資をするときは、リスクを十分に織り込んで余裕資金の範囲にとどめることをおすすめします。
FX(外国為替証拠金取引)
FXは投機やギャンブルのように見られがちです。株の信用取引のように手持ち資金以上の額を投資できるレバレッジ取引ができることや、投資した資金以上の資産を失う恐れがあることが、危険視される一因なのでしょう。
けれど、リスクを十分に意識すれば、外貨預金より有利な点もあります。
メリットの1点目は、外貨預金より為替手数料が安いことが多いという点です。証券会社によっては1ドルが1銭という激安の手数料になっていますし、キャンペーンとして期間限定でゼロということもあります。
2点目は外貨預金より高い利率のスワップ金利が得られることがある点です。スワップ金利とは取り引きする2国間の金利水準の差によって決まる「調整金」です。FX会社はスワップ金利の高さを競い合っているので、同じ通貨でもスワップ金利の額はバラバラで、頻繁に改定されます。
スワップ金利は、自国の金利が高く、相手国の金利が安ければマイナスになり、通貨を持っているだけで投資した資金が毎日少しずつ減っていくこともあります。
その点、日本では日銀が長年にわたって低金利に据え置くという異形の政策を取り続けているため、円で他国通貨を購入した場合は、スワップ金利がマイナスになる危険性がほとんどありませんでした。ただし、金利の上昇圧力が強まっているので、今後も危険がない状態が続くかは分かりません。
FX投資でリスクを減らし、外貨預金にないメリットだけを享受するにはどうすればいいのでしょう。
答えは簡単で、レバレッジをかけない、もしくは極めて低倍率にとどめることです。
国内のFX会社は最大で25倍のレバレッジをかけられます。これは、4万円の証拠金で100万円分の取り引きができるという意味です。
こんな倍率の取り引きをすれば、わずかな為替変動で4万円がなくなるだけでなく、追加の入金を求められて借金を背負うことになります。投機筋などの仕掛けでフラッシュクラッシュという瞬間的な暴落が起きることもあり、「それほど高い倍率で運用していないから安全」だと思っていたのに、気がついたら証拠金をすべて失っていたという悲劇も起こり得ます。
けれど、100万円の証拠金で100万円分の取り引きをする、すなわちレバレッジ1倍の取り引きにすれば、為替変動によるリスクは外貨預金と変わらないことになりますし、フラッシュクラッシュも怖くありません。
米ドルであれば、過去最も円高になったのは2011年10月31日の1ドル=75円32銭です。レバレッジをきっちり1倍にしなくても、75円よりもう少し円高が進んでも破綻しない程度の証拠金を入れて低倍率にすれば、過度なリスクを避けつつ外貨預金より有利に運用できます。
ネックはまとまった額でしか取り引きできないことです。米ドルであれば最低単位が1万ドルということが多く、100万円単位の資金が必要です。少額取引を売りにしているFX会社もあるので、少ない額で取り引きをしたいのであれば、そうした会社に口座を開設しましょう。
新興国通貨などの注意点は外貨預金と同じです。
なお、一部の会社をのぞいては現物の通貨に換えられません。増えた外貨を海外旅行で使うといったことができない点にも注意が必要です。
外国債券
外国の債券を購入する方法はいくつかあります。
1つは証券会社などを通じて債権そのもの(生債券)を購入する方法です。米国債なら、新たに発行される新発債や、発行ずみの既発債などを購入することができます。米国以外の国の債券や公社債、外国企業が発行する社債も買えます。
債券に投資するETF(上場投資信託)を購入する方法もあります。ETFは株式と同じようにリアルタイムで売買できます。
生債券もETFも、事前に換金しておいた外貨で購入する外貨払いか、購入時に円から換金する円払いで買えます。外貨払いなら換金から購入までに間が空くと差益や差損が発生したとみなされる、円払いなら為替手数料が高めに設定されていることがあるなど、どちらにもデメリットがあります。
こうしたデメリットを避けたい場合は、外国の債権に投資している日本国内の投資信託を買うという方法はいかがでしょう。投資信託であれば日本円で100円単位で購入できて便利ですし、源泉ありの特定口座で売買すれば確定申告の手間もなくなります。
日本円で投資するので分散されていないように感じるかもしれませんが、投資先が海外資産なので分散効果が生じます。
投資信託のデメリットは海外のETFに比べて信託報酬が高めなことです。信託報酬は1回限りではなく持っている間ずっとかかるので、継続的に運用成果に影響します。といっても、証券会社間の競争が進んで大幅に低くなってきているので、かつてほどの差はなくなりつつあります。
手間だけを考えれば日本国内の投資信託がおすすめです。どの方法にもメリットとデメリットがあるので、比較してご自身にしっくりくる方法を選んでください。
外国株
国内の証券会社で口座を開けば、世界各国の株式も購入できます。債券と同じく、外貨建てと円建てで買うことができます。GAFAMなど魅力的なグローバル企業が多くあるのは大きな魅力ですが、債券やETFよりリスクが大きく、為替の変動の影響も受けるので、個別株への投資は中上級者向きと言えます。
個別株はリスクが大きすぎると感じるなら、株式を対象としたETFを選ぶ手があります。全世界や全米など地域を対象としたものや、健康や金融など業種を対象としたものなど多彩な商品があります。
債券と同様に、国内の証券会社が発行する投資信託を通じて外国株に投資することもできます。国内のETFもありますが、流動性が低い商品が多いので、あえて選ぶ必要はないと思います。
若者を中心に一時、2倍や3倍のレバレッジをかけて米国ナスダック市場の株式に投資することが流行しました。「レバレッジ」+「ナスダック」を略して「レバナス」などとカジュアルに呼ばれていましたが、レバレッジ型の商品は上げ下げを繰り返す相場では価値が低減していく特性があるので、そもそも長期での保有や積み立て投資には向きません。慣れた人が短期で勝負する商品なので、安易に手を出すのはやめましょう。
海外不動産その他
専門の会社を通じて海外の不動産に投資することも可能です。ただし、極めて難易度が高いので、興味があるなら信頼できる先達に手助けしてもらうことを強くおすすめします。
不動産にも資金を振り向けたいなら、まずは海外の不動産を対象にしたETFや投資信託から始めてはいかがでしょうか。
原油や穀物への投資もできますが、これも高難易度の商品です。興味本位であれば、まずETFを1株か2株買って値動きを確認してみましょう。
最初の一歩でおすすめは
個人的には、外貨預金やFXなど通貨そのものに投資するよりは、高い成長を続ける海外の企業に投資することに魅力を感じます。株式は投資した全員が得をするプラスサムゲームになる可能性があるからです。
といっても、いきなり個別株やETFはハードルが高いので、地域が分散された国内の投資信託から始めるのがいいのではないでしょうか。
投資信託の信託報酬はこの何年かで驚くほど下がっていて、投資対象が同じであればあえてETFを選ばなくてもいいほど魅力的になりました。1日100円から投資できるので、興味があれば小遣いの範囲で試してみることをおすすめします。
たとえ100円でも自分のお金が増えたり減ったりすると、株価や指数の値動きを見ていただけのときとはまったく違うリアルさを感じることができます。
大切なのは、「投資をする・しない」「この商品を購入する・しない」という判断は、理解できる情報をもとに自身ですることです。お世話になっている金融機関の営業担当者にすすめられて、ということだけはやめましょう。
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