都心部を中心に住宅価格が高騰しています。東京五輪の後には下落すると言われていたのがうそのようです。それでも持ち家がほしいという人たちが、マンションに比べて値動きが緩やかな戸建てを選択しています。退職後の暮らしや老後の生活を見据えると、マンションと戸建てはどちらが安心できるのでしょうか。
本ページには、プロモーションが含まれています。
目次
値上がりが続くマンション価格
下のグラフを見てください。2010年1~12月の平均値を100として、全国の宅地と戸建て住宅、区分所有マンションの価格の推移を指数化したグラフです。
宅地や戸建て住宅に比べて、マンションの価格が著しく伸びていることが一目瞭然で分かります。
なかでも、都心のマンションはパワーカップルでも手を出しにくい価格になってきています。急速な値上がりぶりは、1980年代のバブル経済のころのよう。高すぎるマンションをあきらめ、まだしも手が届きやすい戸建て住宅を購入する人も多くいるようです。
マンションと戸建てのメリットは
都心のマンションと戸建てはどちらがメリットが大きいのでしょう。双方のおすすめできる点を比べてみます。
マンションのメリット
マンションのメリットには、以下のような点があります。
戸建てに比べると新築、中古とも物件数が多く、立地や環境、間取りなどの希望をかなえやすいのは大きなメリットでしょう。
新築や築浅の中古であれば、エントランスなど共用部分や室内のバリアフリー化が進んでいるので、足をけがした場合なども安心できます。
防犯や利便性の点でも戸建てを圧倒しています。特にタワーマンションや大規模マンションでは、コンシェルジェが常駐していてクリーニングなどもお願いできたり、共用のラウンジスペースがあったり、「快適さ」が売りになっていて、至れり尽くせりのサービスが用意されていることもあります。
戸建てのメリット
一方、戸建てにも以下のようなメリットがあります。
子どもが小さくて足音を抑えられないときや、中型犬や大型犬を飼いたい場合は戸建てのありがたさを実感します。古い言葉で言えば、やはり「1国1城の主」の自由さを満喫できます。
固定資産税などはかかりますが、毎月の管理費や修繕積立金、車を所有している場合の駐車料などがかからないのも大きなメリットです。ローンを払い終えてしまえば年金収入が少なくても住み続けることができるというのは、退職後や老後の安心材料になります。
マンションと戸建てのデメリットは
今度はそれぞれのデメリットを考えてみます。メリットと同様、比べてみるとそれぞれの特徴が浮かび上がってきます。
マンションのデメリット
まずはマンションのデメリットです。以下のような点があります。
マンションは所有していても、完全に自分の思い通りにはできないことがデメリットであり、ストレスにもなります。
階下の住人から騒音を注意されたり、逆に騒音やピアノの音、深夜の掃除機や洗濯機の音が気になってイライラが募ったり、お互いに不満をためやすいので気遣いが必要です。
タワーマンションなどでは毎月の管理費や修繕積立金だけで、郊外の安いアパートに住めるほどの額になることがあります。新築では10年を超えると修繕積立金が値上げされるケースもあります。
戸建てのデメリット
一方で戸建てにもデメリットがあります。
戸建てのデメリットは「マンションと比べると」という条件つきのものが多く、気にならなかったり納得づくだったりする人にとっては、それほど問題にならないものもあります。
大きな影響があるのは、マンションと同じ面積であれば居住スペースが狭くなってしまうという点です。都心部の戸建ては3階建てが多く、上下の移動が増えてしまうというのも不便な点です。
都心部ではマンションより物件が少なく、希望のエリアや住環境、間取りと金額が見合う物件を見つけにくい面もあります。
けがや老後のことも想像しよう
ここまでマンションと戸建てのメリットとデメリットを見てきました。どちらがいいかは人それぞれで、確実にこちらがいいと言えるだけの決め手はない印象です。
けれど、定年後や老後のことを考えると、少し判断が違ってきます。
都心の3階建て戸建てでは、1階は駐車場と玄関、水回りだけ、2階はリビングダインイング、3階に寝室などという物件を見かけます。こうした住宅では、トイレや入浴のためだけに階段を昇り降りしなければなりません。
介護関係者に聞いた話ですが、こうした戸建てに住む高齢者が階段の昇り降りが難しいほど足腰が弱ると、3階建てのうち特定の階しか使わないという状態になることが多いそうです。
たとえば1階と3階は何年も掃除されたことがない状態で、2階に置かれたベッド回りだけが居住スペースになっている家もよくあるとか。介護用ベッドを置いた階と風呂場のある階が違うので、亡くなるまで自宅の風呂に入ることはかなわなくなる人もいると聞き、いたたまれない気持ちになりました。
別の知人は酔って階段から転落して松葉づえ生活になりました。自宅での階段の昇り降りが極めて難しくなり、床や階段を這うように移動してトイレに行く生活を余儀なくされたそうです。
二つの例は、どちらも都心の狭小戸建てに限定した話です。地方の広い戸建て住宅であればバリアフリー化して快適に過ごすことができるので、戸建てといってもまったく違った状況になるでしょう。
一方、マンションも高層階だと災害時などに身動きが取れなくなることがあります。ただし、こちらはエレベーターさえ動けば何とかなるので、ずっと部屋から出られないという状況が続くわけではありあません。
怖いのはエレベーターのない中層マンションです。賃貸アパートに入居する高齢者には、1階を借りたいという希望がよくあるそうですが、これも移動の不便を避けるためなのでしょう。
住宅を購入する年齢のときは元気いっぱいなので、けがや定年後、老後のことまで考える人は少数です。通勤時間や周辺の環境、価格的に折り合うかに目が行きがちなのが実態ではないでしょうか。
けれど、誰しもけがをする可能性はありますし、いずれ老いがやっていきます。狭小戸建てやマンションの高層階を選ぶなら、万が一のときは住み替えるのか、施設への入居を視野に入れるのか、といったことも考えておくと、安心できるのではないでしょうか。
コメント